夏の花1

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水生植物園水の森

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「男の食彩」はNHKテレビの料理番組用副読本のやうな雑誌だから、レストラン名も学校名も伏せてあるけど、銀座のフランス料理店シェフ十時亨(とときとおる)といふ人が、調理専門学校の校長服部幸應(はっとりゆきお)氏と、如何にしてステーキを上手に焼くか、語り合ってゐた。
 そのコツの中に、二、三箇所、「ほほう」と感嘆するところがあった。特に興味を惹かれたのが、ステーキ肉を、焼く前ほんのちょっと煙で燻す調理手順、これはやってみたいし食べてみたい。
 早速牛肉を買いにいくことにした。 ステーキの旨い不味い、大半は肉の質によるとかねて考へてゐるし、いやしくも「王、長島」が台所に立つ以上、いい加減なものは使ひたくない。某デパートの地階に人形町の「今半」が店を出してゐた。百グラム三千円のサーロインの大きなかたまりの前を、私は往ったり来たりした。ポンドで計算すると約一万三千円、ドルに換算して120ドル、アメリカ人なら0が一つ多い、間違いぢゃないかと言ふだらう。
 余談だが、芥川龍之介の遺稿「或阿呆の一生」の中に、「一人前のビイフ・ステエク」と、その上に「かすかに匂ってゐる阿蘭陀芹」の記述がある。阿蘭陀芹はパセリである。昭和2年パセリを添えて三十銭で食へたテキが、昭和七十四年の今、材料費だけで少なくとも一人前六千円かかる。高いからといって、薄くするのはいやだ。つひに「えいやっ」と決心して、
「これをこのくらゐの厚さに、ステーキ用に二人分」
目方を計ってもらひ、一万円札二枚差し出した。燻製用の桜のチップは、東急ハンズで手に入り、必要な物これで全部揃った。
 燻す時間はほんの十秒あまり、それ以上やると薫煙の香りが鼻につくさうだ。ぼろぼろにほぐしたチップにガスで火をつけ、煙をだしはじめたのをアルミ箔でくるんで、支那鍋の底へ置く。塩胡椒したばかりのステーキ肉を、中の金網の上に載せて蓋をし、
「時計の秒針見てろ、秒針。バターとサラダ・オイルは出してあるか」
厨房の騒ぎが多少「奥、血止め」に似て来るけれど、あとはさう難しくはない。つまり、テキストを見ながら、大体は昔通りの我流でやる。十時・服部両専門家の指示に違背したのは、にんにくを使ったこと、フライパンに残ったつゆへ少量の醤油を入れ、ぢゆっと言はせてステーキソース代わりとしたこと、つけ合わせは芥川の阿蘭陀芹ともちがふ例のクレソン、英名ウォータークレス、和名阿蘭陀芥子とレモンだけに限ったこと、右の三点である。此の、半ば「男の食彩」流、半ば当家流のスモークステーキ・ミデアムレアは、非常に美味しかった。

阿川弘之(「食味風々録」より抜粋)

阿川弘之 小説家、評論家 1920.12.24生まれ 広島市出身

シクンシ(使君子)

シクンシ科シクンシ属 常緑蔓性木本
原産地 インド、ミャンマーなど熱帯アジア
花期間 5月〜10月(個体により違う)
古くからアジアでは漢方薬として栽培され、回虫やギョウ虫の虫下し薬として、シクンシの実が使用されました。
 また、花もきれいで香りも桃のような甘い香りがあります。このため観賞用として広く世界中の熱帯や亜熱帯地方で植栽されています。園芸種によって多少花弁の幅やそり具合の違いがあります。花は咲き初めは白く時間の経過とともに濃いピンク色に変わっていきます。

京都府立植物園観覧温室にて(9月5日)


京都府立植物園

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スモークステーキ

味の華

京都府立植物園


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*文中の「奥、血止め」というのは落語の「大仏餅」のドタバタを指しているものと思われる。