金沢で初めて知った食べものに「このこ」がある。これは、なまこの卵巣をいくつか集めて干したもので、東京では最高の料亭でなければおがめない。
 蕪(かぶら)寿しも年末にだけ作られるもので、普通の寿しを考えていると「これは何?」となる。蕪を七〜八ミリの厚さに切ったものに、薄く切った寒鰤(かんぶり)をはさみ、麹(こうじ)に漬けたものが「蕪(かぶら)寿し」だが、蕪は京都でしか作れない大ぶりのものだし、麹を使うので一度に大量に漬けこむことは出来ない。これが幸いして金沢ならではの食べものになっている。
  昔は仙台の親戚からお餅と松島湾のかきが送られてくると、もう間もなくお正月と思ったが、この頃は金沢から「蕪寿し」が届くとお正月が近づいたという感じになる。
 「棒鰤」も金沢で知った。これは文字通り、魚の鰤(ぶり)を棒状に乾かしたもので、鰹節のように削って、温かい御飯にかけて食べる。
 ばい貝も金沢で初見のもの。ほら貝の小型というか、五、六センチ位のもので、壷焼きにしたり、煮つける。蓋のある所から太目の楊枝で貝の巻き方にそったねじり方でソロソロと引きぬくと、一番先の所まで出せる。この先端部の優しい苦みが何ともいえない。東北の北寄貝(ホッキガイ)と同様に、ばい貝も舌に媚びるようなぬめりがあるのも私は好きだ。
 魚は冬の日本海のものは身がしまっていてすべて良しといえるが、金沢で認識を新たにしたものに鱈(たら)がある。私の鱈の印象は敗戦前後の配給のために顔をそむけたくなるものになっていた。
「鱈の刺身はどうですか。平目の子まぶしの」といわれた時は、「それは遠慮します」と断った。が、無理ににすすめられて一切れ口にしてからは病みつきといいたくなる程のファンとなった。真鱈である。それに白子の焼いたものや生の白子の酢のものも、ゆっくりとひと口ずつ味わいたい美味である。
 今更書くまでもないが、冬のずわい蟹とこうばこ蟹は、これ又絶品である。それに背にたっぷりの青い子を持った甘海老。殻のままで頭だけを取り、子を吸うようにして食べるこの味は、新鮮さこの上なしというものだから出来ることである。


秋山ちえ子(海竜社「春・夏・秋・冬 女の食卓」から抜粋)

秋山ちえ子 評論家 エッセイスト  1917年生れ 宮城県出身
        「風の流れに添って――ラジオ生活57年」など著書多数

夏の花1

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鱈ちり鍋

レシピ

グロリオサ(グロリオーサ)

材料(4人分)

タラの切り身            4切れ
白菜                 4分の1
生しいたけ            4ケ
長ネギ               1本
春菊                2分の1
豆腐                2分の1丁
出し昆布             10cmくらい1枚
ポン酢           適量
塩              少々
昆布茶           少々

ユリ科グロリオサ属 熱帯性球根植物
原産地 アフリカ、アジアの熱帯
花期間 露地6月〜11月 温室は通年
別名 キツネユリ、ユリグルマ、火焔百合
花屋さんではいつの季節でも見かけるようになった花です。温室では運がよければ冬でもみることができます。
 垣根や他の植物に絡まって伸びていきます。よく観察すると葉の先が蔓状になり巻きついているのでビックリします。花の独特の形から覚えやすい植物で、切花としても人気があるようです。
 注意すべきは球根で、自然薯そっくりの形をしていて、有毒と知らず、誤食して中毒になる事故が起きています。

豆知識

@タラの切り身は透明感があるのが新鮮です。
Aタラには真鱈とスケトウ鱈、タイセイヨウタラなどがあります。
 真鱈は切り身で食用として出回っています。
 スケトウ鱈はカマボコなどの原料となり、卵巣は明太子に加工されます。
 近年は近海ものが不漁でカナダ・アラスカからの輸入品が多い。

@タラの切り身の下ごしらえ(ぬめりと臭みを取り身を引き締める)
  切り身に塩少々をまぶし、15分ほどおきます。
             切り身が大きければ食べやすい大きさに切り分ける。
  切り身から水気が出るので、キッチンペーパーで水気をとる。
  次に切り身にコブ茶の粉を少々をまぶして、30分ほど置く
   (昆布茶がなければダシ昆布でサンドイッチにしてもよい)
  この切り身を熱湯に5秒ほどくぐらせ、冷水で冷やし、水気を切る
A白菜は鍋用のザク切りにする。
  生シイタケは石突を取り十文字飾り切りを入れる。
  春菊は根や硬い茎を取り除き、長ければ2等分する。
  長ネギは2cm幅の斜め切りにする。
  豆腐は4分の一に切る
  これらの野菜と下ごしらえしたタラの切り身をザルか大皿に盛る。
B土鍋に水を半分ほどはり、火にかけ、出し昆布を入れる。
  (出し昆布で物足りない人は顆粒のダシの素を入れても良い)
  沸騰する前に昆布は取り出す。
  豆腐、白菜、長ネギ、生シイタケを入れ煮る。
  野菜に火が通ったら、タラの切り身を入れ、春菊は最後に入れる。
  タラの切り身が白くなったら、完成でポン酢でいただきます。

作り方

冬の金沢の味覚

大阪府立花の文化園温室にて(11月15日)


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味の華