夏の花1

シンケンキプフェルとはクロワッサンのように三日月形をした焼菓子・焼パン(=キプフェル)に、シンケン(=ハム)とチーズを挟んだもの。これはレシピを書くまでもない
ので、宙に浮びながらの食事ということで、トリ料理のレシピを一品書きます。

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京都府立植物園
2008年2月11日

鶏と葱の炒めもの

観覧車が好きなのだが、なぜ好きかわからない。
たぶん、低速、無為にして、中天に遊び地にまた戻るくりかえしの、かいのなさがいいのだと思う。あの果てない縦の円軌道。輪廻というか、超えようとして、なお窮まりのない人の業を感じさせてそぞろに切ない。
・・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・
ウィーンはプラター遊園地の大観覧車。1897年完成という、現存する最古の動力式観覧車であることはさておき、映画「第三の男」でジョセフ・コットンとオーソン・ウェルズが乗るシーンで有名になった。
 中世イタリアの戦火のなかでタヴィンチやルネサンスが生れたのに、スイス五百年の平和で生れたのはハト時計だけじゃないか……の台詞(せりふ)をオーソン・ウェルズはこれをバックに言ったのだ。と感慨にふけり、大人一回三十シリングの観覧車に私は連日乗ってみた。
そうしたら気がついた。30番の様子がほかと異なるのだ。じゅうたん、大理石のテーブル、椅子、花模様のカーテンまである。
 某夜、そのワゴンが着飾った人で埋まり、ポンポンとシャンパンを抜き、肉料理らしきものを食べているのを見た。結婚披露宴か。ワゴンは時速2.7キロでしずしずと回っている。円軌道に身をゆだねながらの食事。食べる、回る、食べる、回る……。
 優雅である。滑稽でもある。いつ、だれがこんなことを考えついたのだろう。
「1987年のプラター観覧車誕生九十周年を記念して、30番を特別食堂ワゴンにしたのよ」
 ウィーン歴史博物館に行ったら、ウルスラ・シュトヒというお茶目な女性研究員が教えてくれた。だれが着想したかは知らないという。
 私に負けない観覧車好きのお嬢さんだ。研究室の壁は観覧車の写真、ポスターでいっぱいだった。
・・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・
17世紀ブルガリアの人力回転ブランコが観覧車の起源らしいが、動力式は(異説もあるが)エッフェル塔に対抗して1893年シカゴ万博に出展されたフェリス式大観覧車が最初。
 つまり、1993年は、動力式観覧車誕生百周年である。
 百年たっても変容せず、地球上あまねく広がり、21世紀に向かってなお回転中というのは、人類文化のなかで観覧車ぐらいのものではないか……と自説を披露すれば、ウルスラ嬢はいたく感激し、
「どう、それを記念してあなた、観覧車で食べてみない?私も乗るから」
 話がとんとん拍子にまとまって、観覧車専属の仕出屋社長マイリンガー氏と会ったら、日本人の申しこみははじめて、これからじゃんじゃん金持ち日本人がやってくるかもしれないなあと、はげ頭を光らせ大喜び。値段をまけてもらった。さらに30番ワゴンを一時間チャーターする契約も済ませ、あとは快晴を祈るのみ。
 当日の午後三時。観覧車日和。
 鉄の輪を支える百二十本のスポークが銀色にきらめき、赤いワゴンが青空にくっきりと映えている。
 30番ワゴンでは白い制服のウェーターが待ち受けていた。ウルスラ嬢、私、双方の友人が乗りこむと、観覧車はギギギときしんでからゆっくり回転しはじめた。
 白ワインで乾杯。シンケンキプフェルという長たらしい名のハム、チーズ入りワッフルに噛みついたところで、窓越しに青白く一筋ドナウが見えた。
 ワインを三口やったら、かなたのウイーンの森がグラスに映り揺らめいた。森をかすめて吹いてきたか、風がほのかに木の香りを伝え、頬をくすぐる。はるか遠く、聖シュテファン寺院の鐘楼が目の高さに浮び、やがて消えた。
 景色が三回浮き沈みしたころ、軽い酔いがきた。船酔いとも飛行機酔いともちがう、まどろみを伴うほろ酔い。
 (以下省略)

味の華

シンケンキプフェル

*ウィーンのプラター遊園地の大観覧車は、高さ65m、25人乗りのワゴン車が15台回転
しています。建設当初は30台でしたが、現在は安全のため15台で運行しています。
第二次世界大戦中に爆撃され、翌1945年に修復されたときに映画「第三の男」の撮影が
行われ有名になりました。

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バイカオウレン(梅花黄連)

レシピ

材料(4人分)

鶏むね肉(2cm幅の薄切りにする)    2枚   約500g
(下味調味)
  塩、コショウ        少々
  酒               小さじ 2
  卵白             小1個分
  片栗粉           大さじ 2
長葱(2cm幅の斜め切りにする)      2本   
土生姜  薄切り                       2〜3枚
(炒め用調味)
  サラダ油             大さじ 2              
  酒                 小さじ 2         
  塩                 小さじ 1/2 
  黒コショウ             適量          

京都府立植物園、六甲高山植物園にて

キンポウゲ科オウレン属 多年草
原産地 日本の本州、四国
花期間 平地 1〜3月 山地 3月〜4月
 主に山地の樹林の下に自生しています。
花は白い五弁(これは萼だそうです)で黄色の五個の雄蕊が印象的な小さく可愛い野草です。早春に花が咲く山野草として人気があり、鉢植えで楽しめる手に入りやすい花です。背丈は10cm〜15cm位いのものです。
 なお同属のオウレンは根茎を漢方薬の胃薬として健胃・整腸・消炎用に使用されています。バイカオウレンは薬効がありません。


シンケンキプフェル

作り方

辺見 庸 (角川文庫「もの食う人びと」・『大観覧車で食べる』より抜粋)

辺見 庸  作家 ジャーナリスト  1944年生れ 宮城県出身
       「自動起床装置」第105回芥川賞受賞
       「もの食う人びと」講談社ノンフィクション賞受賞
       他 著作多数



オウレン(黄連)

写真はクリックすると1024×768ピクセルの壁紙サイズの画像がでます

バイカオウレン 西宮緑化植物園にて
2008年2月7日

@鶏むね肉は皮と脂をこそげて取り除き、幅2cmくらいの薄めに切る。
A切った鶏肉をボールにとり下味調味料を入れ、もみこんで全体にまぶし、
  15分ほどおいて味を馴染ます。
B中華鍋にサラダ油大さじ2と土生姜薄切りを入れ、弱火で炒めて油に香り
  を移す。つぎにAの鶏肉を入れ、酒小さじ2をふりかけ、中火にしてかき
  混ぜながら炒める。
C鶏肉に火が通りかけたら、斜め切りにした長葱を入れ、強火にして炒め
  塩少々で味を調え、黒コショウを適量ふりかける。
D3分ほど炒めて出来上がり。
  おかずに良し、ワインやビールのあてにしてもおいしい一品です。